【ご相談内容】小規模個人再生と給与所得者等再生
新潟市内で美容室に勤めておりますが、東京に住んでいた時に作ってしまった借金が、支払えなくなってきてしまいました。
若気の至りと言いますか、見栄を張ってしまい、高級ブランドの服、バッグ、時計、靴などを買ってしまい、その結果できた借金です。
浪費と言われることは分かっています。
加えて、新潟で交際していた相手から、そろそろ結婚しないかというようなことを言われるようになりました。
私も結婚自体は望むところなのですが、何せ、借金の問題を整理してからでないと気持ちが前に進みません。
結婚後に迷惑を変えてしまうのではないかと不安ですし、将来、子供ができた場合に、母親自身がこんな借金まみれでは申し訳ないという気持ちがあります。
早々に今のこの抱えている借金を整理したいと考えています。
一番の問題は、借金の中で最も多いのが、東京で夜のバイトをしているときに、お客さんから借りたことによりできた借金です。
今は、やんわりと督促されていますが、返せないとはっきり言ったら、どんなに激怒されるか分かりません。
ちなみに、買ったブランド品は、新潟に帰ってから、借金の返済のために全て売り払いました。
ですが、到底、そんなお金で返せる借金の額ではありません。
また、新潟で夜のバイトをしようかと思ったのですが、やはり、彼に悪いので、きちんとした借金の整理をしたいと考えております。
やはり、借金の浪費に基づくものですと、自己破産は難しいのでしょうか?
その場合には、個人再生という形になりますか?
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
浪費で借金を作った場合には自己破産できないか?個人再生にすべきか?
ご存じなのかと思いますし、すでにどこかで言われたのかもしれませんが、浪費は自己破産手続きにおいて、免責不許可事由になります。
ただし、浪費に該当したとしても、その個別の事情によって、裁判所の裁量で免責とすることも可能です。
何をすれば、浪費をしたとしても、免責してくれるのかという一義的な答えはありません。
まず、浪費をやめて反省しているのは当然の前提として、
浪費の額、浪費をした頻度、浪費をした時期、浪費をした当時の年収、浪費をした経緯・動機
等、個別の事情を判断して、裁量で免責されるかどうかが決まります。
加えて、浪費がなされた額全額とは言いませんが、反省の意を示すため、いくらかの額を積み立てることを条件に免責がなされることもあります。
結局、破産管財人や担当裁判官の感覚的なところもあります。
いかに、事前にきちんとした準備をして破産手続きに臨むことが重要です。
ただし、何を言い出すか分からないところもあるので、臨機応変に対応しなければならない、というのが実情です。
個人再生(小規模個人再生)における書面決議)
個人再生には実は2つの種類の手続があり、一つは小規模個人再生というもので、もう一つは給与所得者等再生というものです。
双方の違いはいろいろあるのですが、大きな違いの一つとして、小規模個人再生には、債権者による書面決議というものがあることです。
これは、
個人再生を申し立てる人の再生計画について何か異議はありませんか?
と債権者にお伺いを立てるものなのです。
そこで、過半数の賛成を得られないと、以後は個人再生の手続を進められなくなってしまうのです。
他方の給与所得者等再生の場合には、書面決議はありません。
今回のあなたのケースで気になるのは、その最大債権者があなたの個人再生手続きに反対しないかどうかです。
もし、その債権者の方が怒って、個人再生は認めない!と異議を述べてくるようですと、小規模個人再生は使えないのです。
個人再生(給与所得者等再生)と可処分所得基準
「小規模個人再生に書面決議があって債権者の意向に左右されるのなら給与所得者者等再生でいいです」
というかもしれませんが、問題はそれほど簡単ではないのです。
実は、個人再生を利用する方は、小規模事業主という方もいますが、多くは、普通に会社にお勤めの給与所得者なのです。
ですが、その方たちが、給与所得者等再生を利用するかというと、そうではなく、大半の方が小規模個人再生を利用します。
小規模個人再生が多く利用される理由
なぜかと言いますと、それは、給与所得者等再生の方が小規模個人再生に比べて、最低弁済額が高くなる傾向にあるからです。
なぜ、小規模個人再生と比べて、給与所得者等再生の方が最低弁済額が高くなるのかというと、給与所得者等再生の場合には、
【可処分所得の2年分以上を返済すること】
という要件があるからです。
可処分所得の意味
「可処分所得」とは、なにやら耳慣れない、難しそうな言葉ですが、これは、
「処分」が「可」能な「所得」のことです。
(ですが、「処分可所得」とは言いません。念のため。)
所得があると言っても、生きていれば、家賃、交通費、食費、光熱費、電話代等の通信費、交際費、日用品等いろいろお金が生活費でかかりますよね?
そこで、所得から生活費を引いた残りの額が、ある意味、借金の返済等に回せる「可処分所得」となります。
例えば、年収が300万円で、年間生活費が250万円であるとすると、50万円が可処分所得となります。
そして、給与所得者等再生の場合には、
最低でも、可処分所得の2年分以上は返済に回さなければならない、
とされているのです。
可処分所得の計算の方法
「ああ、なんだ。私の場合には、生活費がかつかつだから、可処分所得なんてほとんどないので大丈夫です。」
と思わないでください。
あなたの現実の生活費を聞いているわけではないのです。
所得から差し引く「生活費」というのは、法律で決められてしまっているのです。
法律に従って計算した生活費が250万円であるとすれば、現実には300万円が生活費であったとしても、
可処分所得は「50万円」になるのです。
現実の生活費と法律(政令)の生活費は違う
ですので、現実の生活費と法律で定められた生活費のギャップが多い人は、本当は余っていないのに、
「余っているはずだ」として可処分所得2年分の返済を求められ、苦しい思いをすることになります。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、浪費で借金を作った場合には自己破産できないか?個人再生にすべきか?について、小規模個人再生における書面決議、及び、給与所得者等再生と可処分所得基準も含めて、ご説明致しました。~