【ご相談内容】個人再生で事業継続できるか?
ビニール印刷物の作成及びコンサルティングを行っていますが、個人で営業をしております。
在庫や仕入れはないのです。
なのに、作成を依頼している工場が一時期、資金繰りが苦しくなり、その工場が動かないと私も商売できなくなるので、無理してキャッシング等でお金をかき集めて貸してしまいました。
ですが、その甲斐もなく、結局、その工場は倒産して、私名義の借金が残りました。
私も急なことだったので、高い金利でもすぐ借りれるお金をかき集めてしまったので、支払いが苦しいです。
もともと、私ともう一人の営業マン、それと事務の正社員とパートがそれぞれ1名の小さな事務所です。
利益もそれほどではなかったところに、このような借金を抱えてしまい、さらに悪いことには、その工場は安くてよかったのですが、潰れてしまったことです。
新しい委託先工場を見つけましたが、高いです。
正確に言えば、相場並みなのですが、今まで、その安い工場で利益を出してきた側面があるので、一気に、私自身も苦しくなってきてしまいました。
ただ、昔ながらのお取引様も複数あることですし、今後は、さらに営業強化するつもりですので、潰したくはないです。
事業継続したいです。
破産したくないです。
なんとかならないでしょうか?
債務整理とか民事再生とか何でもいいです。
【ご回答】~弁護士(新潟市・新潟県)から~
個人再生手続きによる事業継続の判断
個人事業主の方で事業継続を前提とされるということであれば、やはり、任意整理か個人再生を検討することになるかと存じます。
一般的なチェックとしては、
1)継続収入が今後も見込めるか?
売り上げが上がっても利益が出ないのではいけません。
2)予想される返済金を支払っていけるか?
基本的には、債権に関しては、債権カットがされるのですが、それでも、債権カットした残額を返済していかなければいけません。
そして、月々の返済金はある程度は債権総額から予想することができます。
債権総額が100万円未満
・・・返済総額 その金額
債権総額が100万以上500万円未満
・・・返済総額 100万円
債権総額が500万以上1500万円未満
・・・返済総額 債権総額の5分の1
債権総額が1500万以上3000万円未満
・・・返済総額 300万円
債権総額が3000万以上5000万円未満
・・・返済総額 債権総額の10分の1
ただし、資産・財産がある場合であって、それらの資産価値相当額が、上記の計算で算出される返済総額よりも高い場合には、資産価値相当額が返済相当額になります。
もちろん、詳しく見てみないと最終的には確定しませんが、大体の返済総額が分かれば、月々の返済金も見えてきますので、それで、返済できるかどうかが個人再生するかどうかの目安となります。
3)従業員、取引先、得意先が逃げないかどうか
「これから個人再生をします」
といきなり言われれば、大体、取引先はビビります。
従業員なら、
「もう、給与支払ってもらえないのではないだろうか?」
取引先なら、
「請負代金や商品代、委託料が焦げ付くのではないだろうか?」
得意先(納品先)なら、
「そこの会社からの納品がストップしてしまうかもしれない。」
と懸念します。
それはそうです。
そして、いくら返済計画がどうのこうのいったところで、こういう取引関係者がいなくなってしまっては事業はストップしてしまいます。
ですので、絶対に事前協議・説明が必要です。
場合によっては、弁護士にも手を借りて、これからどのような手続きをして、どのように再生していくのかを理解してもらい、安心してもらい、協力してもらわないといけません。
単に、これから再生しますという通知を一本送っておけばいいというものではありません。
ただ、その際に、なんでも言いなりになればいいというものでもありません。
特に、仕入れ先などは、過去の○○分も支払ってほしい、などと言ってくる可能性もありますが、何をどこまで応じるかはそれこそ弁護士とよく協議して実行するようにしてください。
4)別除権者の存在
別除権と言って、担保をとっている債権者が存在する場合があります。
代表的なのはリース業者です。
リースなので、リース料を支払わないと、自動車、重機、ソフトその他のものを引き揚げられてしまいます。
ですので、そのリース業者等との間で別除権協定という、リース料は別途支払うので、引き揚げないでくださいという合意をする必要があります。その場合もいろいろな条件があります。
5)買掛けの問題(共益債権)
基本的には、民事再生(個人再生)する場合には、やはり相手の取引業者も怖いでしょうから、現金決済を求められるようになります。
買掛にする場合であっても、本来なら、債務の支払いというのは債権者平等の原則から、一部の業者にのみ支払うことはできないのですが、事業継続に必要な仕入れや報酬の支払いは「共益債権」として支払いをストップせずに実行することが認められます。
ただし、個人再生を申し立てるタイミング等によって、その買掛けを支払うのに裁判所の許可が必要となる場合もあるので、その点をよく検討しないといけないです。
「共益債権」だから、何でも支払って大丈夫、というものではありません。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(新潟市・新潟県)から、個人再生で事業継続?できるのか?について、個人再生で事業を継続するために検討すべき問題点をいくつか挙げて、ご説明いたしました~